ようこそ能の世界へ

能楽とは?

能の楽しみ方

演目のご紹介

 

演目のご紹介|ようこそ能の世界へ

海士

物語

海士

藤原房前はあるとき出生の秘密を知ります。母は十三年前に讃州志度の浦で死んだ海士だというのです。

 

房前は供養のため志度の浦に下ります。一行の前に昔を良く知る海士が現れて語ります。

 

−昔、唐の皇帝より贈られた三つの宝のうち、面向不背の玉がこの沖で龍宮へ奪われ、玉を取り返すため、身分を隠して淡海公(房前の父・不比等)がこの浦へ下られ、海士との間に男子をもうけたこと。その子を世継ぎにする約束で、海士は命懸けで玉を取り戻した様子を詳しく真似て見せます。その様子は大層真に迫っていました。やがて私こそあなたの母の亡霊と明かして波の底に消えます。

 

盛大に追善供養が行われると、法華経の経文にあるように、龍女となって成仏した母が現れます。そして法華経の功徳を讃え、成仏出来た喜びを舞うのでした。

 

舞台展開

海士

〈次第〉の囃子で、子方(房前)、ワキ・ワキツレ(従者)が登場します。面は中年の女性の〈深井〉。水衣(労働着)を着、海草(杉の葉を束ねて表す)と、鎌を持っています。

 

前半の見どころは何といっても玉を取り返す様子を詳しく見せる“玉之段”。緊迫した地謡と囃子、シテの具体的な型が一体となった面白さがあります。

 

海士

シテは母と明かして子方に中啓(扇)を渡します。これは母からの手紙を表します。

 

〈中入〉の間狂言の語りの後、子方は手紙を開き読み上げ、供養をします。

 

〈出端〉の囃子で後シテが現れます。龍台を戴き、〈泥眼〉の面を付け、舞衣・大口姿。左手に経巻を持っています。早舞は成仏の喜びを表す華やかな盤渉調です。

 

鑑賞

海士

藤原房前は実在の人物。藤原氏の祖・鎌足の孫にあたります。そして今も奈良・興福寺に残る二つの宝、華原磬(国宝)、泗浜石。(但し、面向不背の玉はありません)

 

虚構の世界に巧みに織り込まれた史実が曲に広がりを持たせています。そして何より我が子のために、命と引き換えにして玉を取り返す母心に、心打たれる曲です。

 

当時流布していた女人は成仏できないという教えの中、法華経に書かれているように龍女になって成仏し、再び現れた母の姿は、龍宮で悪龍に追われて死んだ故に、とても複雑な思いにとらわれます。

 

前のページへ戻る

前のページに戻るpagetop