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春日龍神

物語

春日龍神

明恵上人は仏跡を訪ねるため、唐から天竺へ渡ることを志し、春日の明神へ暇乞いに南都を訪れます。

 

宮守の翁と出会って参詣の趣を告げると、春日の明神も信頼を寄せ、徳を慕うと上人が入唐渡天することは、神慮に背くことであり、釈迦入滅後に仏跡を訪ねても意味のないことであると諭されます。翁は「三笠山に仏跡を遷して、釈迦の誕生から入滅まで全て再現してお見せしましょう」と約束します。そして自分こそ、春日の神が鹿島からこの地に渡られた時、従った中臣時風・秀行であると明かして姿を消します。

 

一面金色に輝く春日野。大地は振動し、春日の神の使いの龍神が眷属を引き連れて出現し、釈迦の説法に連なる様子を見せ、上人が思い止まったことを確かめると、波を蹴立てて猿沢の池に姿を消します。

 

 

舞台展開

春日龍神

〈次第〉の囃子で明恵上人(ワキ)と従僧(ワキツレ)が登場し、入唐渡天のため春日明神に暇乞いをする由を述べます。〈道行〉では春日の里までの道中の様子を謡っています。

 

〈一声〉の囃子で尉(前シテ)が登場します。翁烏帽子に薄い縒狩衣という出立で、品の良い宮人です。

 

春日龍神

上人が宮人を呼び止めて、参詣の趣意を話します。すると翁は上人が日本を離れることは神慮に背くことであり、いかに春日の神が上人を慕っているかということや、この春日の山や野を仏跡と思い、崇めるべきであると諭します。そして我こそ、春日の神の随神、時風・秀行が仮の姿であると明かし、奇瑞を約束して姿を消します。(中入)

 

社人(間狂言)の語りの後、〈早笛〉の囃子で龍神(後シテ)が颯爽と登場します。面は黒髭、赤頭の上に龍台を戴いた姿です。八大龍王や百千の眷属を従えている様子は地謡とシテ謡の掛け合いによって表現されています。一同の釈迦を取り囲んで説法を聴聞する様を表す型・龍神の躍動感を表現する〈舞働〉と続き、上人が仏跡を訪ねないことを確かめて、猿沢の池に消えるところは、飛び返って大きく袖を被きます。

 

鑑賞

春日龍神

この能を面白く見るために重要なポイントは、ワキである明恵上人を知ることです。

 

時は源平の戦乱の世、明恵は八歳で父母を亡くし、翌年、神護寺に入ります。仏教の教義は頽廃するなか、明恵は釈迦の教えに立ち戻ろうと、ひたすら深い山の中で修行します。釈迦を深く尊敬するあまり、天竺行きを志し、三十一歳の時、春日明神の神託により断念。余りにも純粋で厳しい信仰心の持ち主です。また十九の年より四十年間、著した『夢の記』(夢の記録)があり、明恵にとって夢は、ある時は信仰を深める神秘的な体験だったのです。そんな明恵だからこそね龍神が繰り広げる夢のような奇跡の数々を見ることが出来たのでしょう。

 

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