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千手

物語

千手

一の谷の合戦で生け捕られた平重衡は、鎌倉に送られ、狩野介宗茂に預けられ、死を待つ身の上です。手越の長の娘・千手は頼朝に遣わされて重衡を見舞い、出家の願いが叶わぬ由を伝えます。千手は意気消沈する重衡を慰めようと「十悪と言えども引摂す(十悪の罪人も、仏は極楽へ迎え取る)」と朗詠して舞います。そんな千手の思いやりに、重衡の心も解け、琵琶を弾き、千手も琴を合わせます。やがて夜明けとともに重衡は再び都へ送られて行き、千手は泣く泣く見送るのでした。

 

舞台展開

千手

まず、狩野介宗茂(ワキ)が登場し、生け捕りとなった平重衡を預かり、頼朝は側近く召し使っている千手を遣わされる由を述べます。〈次第〉の囃子で、千手 (シテ)が登場し、宗茂に案内を乞います。重衡(ツレ)の我が身を嘆く〈サシ〉謡の後、宗茂が千手の来訪を知らせます。重衡は対面を拒みますが、これも頼朝の命令と「妻戸をきりりと押し開き」と重衡の前に進みます。出家の望みが叶えられなかったことを千手が伝えると、重衡は落胆します。そんな重衡を慰めようと、宗茂は酒を勧め千手はお酌に立ちます。千手は「羅綺の重衣たる...」という菅原道真の歌を朗詠します。この詩を朗詠すれば、詠ずる人も聞く人も守ろうと誓いの込められた詩です。しかしながら重衡は、この世には何の望みもなく、来世に望みを託していると言うと、千手は「十悪と言えども引摂す(十悪を犯した罪人も、仏は導いて下さる)」と朗詠します。つづく〈クリ〉〈サシ〉〈クセ〉は、重衡が生け捕られて鎌倉に送られるまでの経緯を千手が語り舞うところです。〈序之舞〉の後、心慰められた重衡は、興に乗り琵琶を奏で、千手も琴を合わせます。やがて夜が明けると、重衡は再び都へ送られて行きます。「はや後朝に引き離るる袖と袖との露涙」と、二人がすれ違う型は殊のほか印象的です。

 

 

鑑賞

千手

一の谷の合戦で生け捕られた重衡を、頼朝は粗略に扱わず、側近く召し使っていた千手を遣わします。千手は手越の長の娘で、歳は二十歳ばかり。色白で容貌・姿・気立てもこの上なく優雅な女性でした。南都を焼き討ちにし、大仏を焼き、多くの僧侶を殺した重罪を犯した重衡は、ただ出家を志し来世に望みを託しています。そんな重衡の心に束の間の安らぎと希望の光を与えた千手は真心のある女性でした。『平家物語』には、重衡の死後、千手は出家し、重衡の菩提を弔ったと伝えています

 

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