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演目のご紹介|ようこそ能の世界へ

物語

融

初めて都へ上ることを思い立った僧は、はるばる東国からの旅を終え、六条河原院の旧跡で一息つきます。そこへ田子を担いだ汐汲みの老人が現れます。海辺でもないのに汐汲みとはと不審に思った僧が尋ねると、翁は河原院の謂れを物語るのでした。

 

−その昔、嵯峨天皇の皇子・源融という方は、陸奥の千賀の塩釜の浦の景色を模してこの庭を造られました。毎日難波の浦より海水を運ばせて、塩を焼き、その風情を楽しまれたのでございます。−

 

今は恍々とした月に照らし出された廃墟を、翁はしみじみと眺め涙するのでした。

 

僧の求めに応じて、都の名所をさし示す翁、いずれも秋の趣深い風情に、興に乗じ汐汲みを真似て見せる間に、翁は何処とも知らず消え失せます。(中入)

 

余りの不思議さに、仮寝をして待つ僧の前に、在りし日の姿で融大臣が現れます。

 

月光のもと昔日を懐かしんで舞い興じる優雅な姿。やがて西に傾く月の光の中に消えていきます。

 

舞台展開

融

まず囃子方が座に着くと、〈名ノリ〉笛につれ、旅の僧(ワキ)が登場します。東国よりはるばる都・六条河原院に着いた由を述べます。

 

〈一声〉の囃子で、田子を担いだ汐汲みの老人(前シテ)が登場し、ワキにこの旧跡にまつわる謂れを語ります。さらに、初めて上洛したワキのために都の名所を指し示して教えます。月下に広がる壮大な庭園の跡、趣深い都の山々。老人は楽しげに汐を汲み、二つの桶に宿る月影を愛で、やがて田子をはらりと捨てて、何処ともなく消え失せる様子で中入りします。間狂言の語りの後、〈出端〉の囃子で融大臣(後シテ)が登場します。面は〈中将〉、初冠を着け、単狩衣・指貫袴、若い貴族の姿です。中啓(扇)は〈融扇〉といって秋草にすだく虫の図柄です。盤渉調の高い音色の美しい旋律の早舞を優雅に舞います。

 

鑑賞

融

月にくまなく照らし出される広大な廃墟。その周りに囲む洛中の山々。秋風の音。すべての舞台設定は謡によって描き出されて行きます。三間四方の舞台は、舞台装置もないのに、広がりのある詩情豊かな世界に辺かして行きます。

 

融大臣の死後、桁違いにスケールの大きいロマン溢れる庭は、荒れるにまかせて行きます。その夢のあとは後世の人々にも憧れをもって語り継がれ、こうしてまた舞台を見る観客の心に描き出されて行くのです。

 

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